プロローグ公開!! こいつできる!と思われるいまどきの「段取り」 著:野田宜成

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お陰様で増刷も決まり、日本全国、多くの方に手にとって頂けて本当に感謝です!
中には、1000冊という単位でご購入いただいている企業様もあるようで嬉しい限りです!

いまどきの段取りは、他人の効率を高める段取り
人にも好かれて、自分の効率もみるみるアップ!

ということが多くの方に伝われば幸いです。

そこで、今回!
もっと多くの方にこの本を手にとって頂きたいと思い、
プロローグの全文とCHAPTER1の冒頭を公開させて頂きます。

いまどきの段取りとは何か!?
なぜ、野田が段取りの本を書いたのか!?

それが伝わり、また多くの方のもとにこの本が届けば幸いです。

 



 

プロローグ ― 私の経験から段取りを考えてみた

 「やらねばならない忙しさから、やりたいで充満する時間へ」

 段取りとは、辞書によると、
 「事を運ぶための順序。事がうまく運ぶように、前もって手順をととのえること」とあります。
 段取りとは、すべてにおいて、うまく事を運ぶためのものなのです。

 では、段取りの良い人と、悪い人ではどんな違いがあるのでしょうか? 本書では、シチュエーション別に具体的な説明していきたいと思います。

 その前にまず、私と段取りの出会いについて、私の体験にもとづいてお話ししたいと思います。

 私が大学を卒業して入社したのは、日産車体という自動車関連の上場企業でした。フェアレディZの設計・開発に関わりたかったのですが、日産自動車では直接設計・開発をしていないことを知り、その設計などに関わることのできる日産車体の採用試験を受け、運良く入社できたのです。

 工場ですごく先輩たちに意識させられ鍛え上げられたのが「時間」の概念でした。
 日本の自動車メーカーが世界のトップクラスになれたのは、この考え方があったからだと思います。
 「時間」を考える上で、3つの言葉が常に、飛び交っていました。

 「ムダ」
 「整理整頓(または、5S)」
 「段取り」

 これを徹底することにより、生産性が向上し、安くて良いものが作れるようになったのです。しかし、若手時代の私は、本当にダメ社員で、ムダはたくさんあるは、整理整頓はできないは、段取りは悪いはで、本当に、うだつが上がらない社員でした。

 あるとき、実験用の車に新材料を使用しなければならないところを、自分のミスで、すでに販売している生産車に使用してしまったことがありました。

 本当にこっぴどく怒られました。それもそのはず、自動車の生産ラインは、1時間止めると約300万円、それにもう一度、実験をしないといけないですし、間違えて使用した生産車はもう一度つくり直しです。その時の上司からは、

 「考えても考えすぎることはない。ミスのないように、徹底して頭の中でシミュレーションしろ!段取り下手は、仕事下手だ」と、いわれました。

 それ以降、頭の中で何度も何度も本番の場面を思い描き、漏れがないかをチェックするクセづけをするようにしました。日産時代には、「時間」をムダにしないために、徹底して段取りをする、ということを学ばせてもらったのです。

 その後、日産車体を退職し、よく著作を読んでいた、船井幸雄先生の創業した船井総合研究所に転職しました。

 そこでは、「時間」の概念を、ガツーンと、変えてもらいました。
 どういうことかというと、段取りに対する考え方が、単なる時間を短縮するものから、人として必要な時間を生み出すもの、に変わったのです。感覚的には、人形が、単なる物理利的な物体から、魂を吹き込むことにより、人に近い人形になる、そんな感じです。

 こんな出来事がありました。
 あるとき、船井幸雄先生と一緒に仕事をしているとき、私が先にお手洗いに行き、その後、船井先生が入られ、帰ってくるやいなや、秘書に、「野田君の後のトイレは、汚い」といわれたのです。秘書に話しているのに、僕に聞こえる声で……。

 私はすかさず、「会長、僕も大人だから、汚くなんてしてませんよ」と、いうと、「野田君は、生産性ってわかるか?」と聞かれました。「はい、ご存じの通り、前職でそれが専門でしたから」と、答えると、「野田君は、浅はかだな。」と、続けてこういわれたのです。

 「生産性というのはな、自分の時間を短縮するってことではなく、相手の時間を短縮することなんだ。だから、日本人はお手洗いに行くと、スリッパを、ちゃんと次の人が履きやすいように向きを変えて置くだろう。自分だけの時間短縮なら、次の人を考えずに脱いだらいい。でも、それでは、浅はかな人間になってしまうよな。お手洗いも、入るときより、美しくして出る。これが、生産性を上げるということだと僕は思う。」

 さらにその後、ホテルで、「ホテルの部屋から出るときに、きちんとキレイにして出なさい。そうすることにより、掃除係の人の時間が短縮される」と教えられました。

 「会長、でもそれは、その人の仕事を奪うことにならないのですか?」と、尋ねると

 「本当に浅はかだな。もし、その掃除係の人が、将来、がんばって資格を取って、今より世のためにがんばるぞと思っていたとする。そうであれば、掃除短縮で5分でも時間ができれば、その人は勉強をするかもしれない。そのほうが世のため人のためになると思わないか?」、と教えられたのです。

 自動車エンジニアとして、0.1秒単位で時間削減を考えていた自分が、このとき初めて、段取りをして、時間を短縮することが何の意味を持つのかを、はっきりとわかったのです。

 すべては、世のため人のためなのです。生産性アップ、段取りにより、時間短縮をすることは、自分のためではなく、人のため。ここで初めて、段取りという言葉に魂を入れられた思いがしたのです。

 その後も、上司であり、師匠である、船井幸雄先生には、ことある事に、大切なことを教えてもらいました。

 経営とは何か? と、尋ねたときにも、「一番してはいけないのが『今だけ、自分だけ、お金だけ』だ。向かうのは、『世のため、人のため』」と教わりました。それに向かうために、日々、成長したいと思っています。

 段取りも同じで大切なのは、「他人の時間を短縮すること」「世のため、人のためになること」。これが、究極の段取り達人だと思うのです。

 よく、環境がすべてといいます。インターネット関連のベンチャー企業に誘われて、働く場を変えたときには、会社が変わると常識は変わるものだと、つくづく感じました。というのも、とにかくベンチャー企業は、働く、よく働く。気づくと、朝まで仕事しているというのもザラ。

 しかし、毎日、毎日、長い時間仕事をしていると、すごい結果が出るかと、そうではなく、効率が低下してくるのも事実でした。

 ゴールを教えられずに走りはじめ、マラソンの42.195kmのところで「はいここまで」と走り終えるのと、あらかじめゴールが42.195kmとわかって走るのとでは、パフォーマンスが異なります。人は、ゴールがあるということでがんばれるのです。ですから、ゴールが非常に遠い人生でも、要所、要所でゴールを設定すると、メリハリが効くのです。

 パフォーマンスを上げるためには、メリハリがすごく大事で、メリハリを良くするということは、段取り上手ということになるのです。とにかく、長く仕事をするのではなく、何時というのを、ゴールに決め、とにかく、そこで終わらす努力をする。間に合わなければ、翌朝、早くからやる。このことが大事なのです。

 インターネット関連のベンチャー企業で1年と少し働いた後、コンサルタントとして独立、起業しました。日本の企業の99.7%が中小企業。その中小企業を笑顔にしたいという想いからです。独立すると、2つのあたり前なことに気がつきました。

 一つは、働いてお金をもらうことが自分の労働に対する見返りである、ということです。

 「はい、これ、対価です」と渡されると、「えっ、こんなにいただいて、すいません」と、つい、サラリーマン生活が長いと返答してしまいます。しかし、これは、お金が巡ってこない受け答えだそうです。

 女優やモデルも受け答えで成功のあるなしがわかるということを、映画のプロデューサーに聞いたことがあります。
 本当にキレイかどうかよりも、受け答えが大事だそうで、「あなた、キレイだね」といわれたときに、「えっ!そんなことないです」という人は大成しにくく、「えっ!ありがとうございます」と受け取る人は、大成するのだそうです。

 経営や、お金も一緒で「えっ!」と思ってもすかさず、「ありがとうございます」と受け取れるかどうか。実は個人的には、この考え方になるのに一番時間がかかりました。

 これは、お金に対する感情、つまり、お金を受け取る気持ちの段取りが一番大切だということで、このことはもちろん学校では教えてくれないので、時間が相当かかりました。

 もう一つは、時間が自由ということです。

 これは、あたり前のことですが驚きでした。いつまで仕事していても、何時まで寝ていても、何をしていても、当然ですが誰も何も言わないのです。

 あるとき、お世話になっている先輩に時間が自由であることに対する心構えを教えてもらいました。それは、「自分の意思のもと、他人に時間をコントロールしてもらう」というテクニックです。

 どういうことかというと、自分で、これをしたい、こうしていきたい、というのがあっても、それを自分だけでやると、なかなか、時間が思うように使いこなせないことってありますよね。そういうときは、他の人に関わってもらって、その人に時間をコントロールしてもらうのです。

 例えば、まだ、企画書ができていないとします。どうしても、その会社と仕事がしたい。こんなことを提案したい。そんなときは、相手に連絡をして、

 「○○さん 提案書をつくりました。ぜひ、話を聞いてくれませんか? 来週などお時間はないでしょうか?」
 と、まだできていないのに、できたことにして、相手に時間を決めてもらうのです。そうすると、期限が決められるので、それまでにどうしてもやり遂げなければいけません。

 そうやって、自分の意思のもと、他人の力を借りながら、時間をきめていく、ということを教えてもらったのです。

 これは、相当効きます。

 このように、ちょっと考え方を変えるだけで劇的に時間術が変わる、こういうことが段取り上手であると私は思っています。

 人生は、時間で積み上がっています。およそ、たった2万日の時間です。

 段取り良く人生を歩めば、より幸せな人生になると思います。

 ぜひ段取りとうまく付き合ってください。

野田宜成

 

 

 

CHAPTER 1 できる人は、こんな「段取り」をしている!

 01  なぜ、今、段取りなのか?

 

 

 段取りはすごく使い古された言葉ですが、段取り上手と、そうでない人とでは、人生が大幅に違います。というのも、この20年間、仕事の道具は、飛躍的に増え、仕事の時間は大幅に下がり、数値的には一見、仕事に余裕が出そうですが、「忙しさ」は、昔よりも加速しているのが実感ではないでしょうか?

 1990年には、一人あたりの平均年間総労働時間は、独立行政法人 労働政策研究・研究機構の「データブック国際労働比較」(以下同様)によると

 日本   2,031時間
 アメリカ 1,831時間
 イタリア 1,867時間
 ドイツ  1,578時間

 と、先進国の中では、ダントツ日本が働いていました。

 そこから、22年後の2012年には

 日本   1,745時間
 アメリカ 1,790時間
 イタリア 1,752時間
 ドイツ  1,479時間

 と、時間は短縮しているのです。しかし、「忙しくなく、余裕が出た」と、思っている人は、少ないのです。
 道具もこの22年間で、コピー機、パソコン、携帯電話、スキャナーなど仕事の時間を短縮するものが、たくさん出てきたにもかかわらず、忙しさが減るどころか、増えているのです。どうも、人間は、便利になればなるほど、あれもこれもやりたいと、やることが増え、どれもやりきれず、真の時間余裕よりも、心の余裕がなくなり、心の忙しさが減らないのではないかと思うのです。

 では、どうすると良いのか? その解消に「段取り」が効いてくるのです。

 日産のエンジニアの頃に学んだ資料のデータが参考になるので紹介します。
 8種類の作業が、どのようにすると生産性が上がるのか、作業の方法によってどれくらい違うのか、を実験したある大学の研究結果です。

 3つのパターンで作業をします。

 パターン1) 8回の作業をしてから、まとめて片付ける。
 パターン2) 4回の作業をしてから、片づけ。再度、4回作業をしてから、片づける。
 パターン3) 毎回作業をして片づける。それを8回繰り返す。

 どれくらい違うでしょうか?
 まとめてやった方が、早い! と思った方、はずれです。あなたは、古いタイプの仕事の仕方です。結果は、

 パターン1) 作業時間 27分 消費カロリー 76.1kcal
 パターン2) 作業時間 21分
 パターン3) 作業時間 15分 消費カロリー 31kcal

 つまり、その都度やるほうが、作業時間は短縮されるのです。
 短縮すれば、消費カロリーも減少しますから、良いことですよね。

 このように、特別なやり方や特別な道具を使わなくても、今のやり方をちょっと変えるだけで、生産性が上がることがあります。つまり今までの常識にとらわれない方法をすると良いのです。

 段取りは、忙しいときに余裕をつくってくれるものです。それは、物理的にも、精神的にもです。そのために、難しいことを覚えたり、訓練したりするのではなく、ちょっと順番を変えてみる、ちょっとやり方を変えてみる。これが段取り上手になるコツです。

さぁ、段取り達人の道へ、ようこそ!

 ■ POINT ■ 

◯ 良い段取り  ――― やりたいことをたくさんできる人。口癖は「充実してる」
△ 惜しい段取り ――― やるべきことで時間が過ぎてしまう。口癖は「忙しい。」
☓  悪い段取り  ――― 時間管理をされている人。口癖は「知らないうちに、時間が経つ」


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内容紹介
◎仕事で大切な「段取り」を、様々な視点で解説! 
 「段取り」を、時間管理、チーム運営、資料・名刺の整理、思考の整理、アイデア出し、報連相など、様々な視点で解説します。
 また、段取りの「仕組み化」についても紹介します。
 
 ◎多くの立場、職種で実践してきた「段取り」の方法を紹介! 
 著者は、理系・文系、大企業・中小企業・起業家と様々な立場で、「段取り」を実践してきました。
 その体験と工夫を、本書では紹介しています。
 
 ◎「段取り」が8割という言葉があるように、段取りは仕事の基礎中の基礎! 
 本書では、若手社員が早くに覚えておくべき、また、中堅社員が改めて覚えておきたい仕事の基礎知識をやさしく解説します。
 若手社員の上司もぜひご一読いただきたい1冊です。
 
 ★いまどきの段取りとは、他人の効率を高められる段取り★
 → 自分の効率もみるみるアップ! 
 → 人にも好かれて、期待値も急上昇! ! 
 
 <構成>
 プロローグ──私の体験から段取りを考えてみた
 1章 できる人は、こんな「段取り」をしている! 
 2章 「スピードアップ」は絶妙な段取りから──時間管理・進捗管理・目標管理
 3章 「プロジェクト」は段取りでゼロから変わる──チーム運営・打ち合わせ・会議・プレゼン
 4章 「整理術」も結局は段取り次第──資料・記憶・名刺・思考の整理
 5章 「アイデア発想」は段取りで劇的にアップ──発想力、メモ術
 6章 「報連相」の段取りでコミュニケーション力アップ──報告・連絡・相談・メール
 7章 段取りの「仕組み化」にチャレンジしよう!
 
著者について
野田宜成(のだ よしなり)
 
 1966年生まれ。愛知県出身。(株)ビジネスミート代表取締役。継続経営コンサルタント。今までに9000人以上の経営者、500社以上の企業に携わる。
 神奈川大学機械工学科卒業後、日産車体(株)に入社。エンジニアとして、新車開発、工場設計、継続した品質向上、徹底した生産効率の改善に従事。 
 1999年、(株)船井総合研究所入社。メーカー・通販会社などの仕組み作り、売上向上、事業計画の立案や生産効率向上など数々のコンサルティング業務で実績をあげた。
 2005年1月に船井総研ロジ(株)物販事業企画室長、その後、(株)まぐまぐ事業開発室長を務めたのち、独立。
 独立後も、継続をテーマに経営指導を実践。積極的に世界各国に足を運び、現地の最新情報を取集。全国各地で講演を行う。
 自動車メーカー→経営コンサルティング会社→IT企業→独立、という稀有な経験を通して、ものづくり日本の厳格な工場ロジック×「人生=経営」マインド×正確な情報発信を習得し、「世のため、人のため」になる事を伝えていきたいと考えている。
 15年超続く、経営勉強会ビジネスサークルを運営。信条は「未来の子ども達が笑顔になる」ための、継続企業作り。
 著書に『見えないものがみえてくる 数値力の磨き方』(日本実業出版社)がある。